3月11日午後2時46分、宮城県沖太平洋でM9.0の巨大地震が発生した。直後に大津波の襲来を受け、東北から関東にかけての広い範囲で、あの阪神淡路大震災(平成7年1月17日発生)をはるかに上回る甚大な被害をもたらした。今日現在の死者・安否不明者が約30,000人と膨大な数にのぼり「東日本大震災」と仮称されるこの地震・津波災害は、「東京電力福島第一原子力発電所事故」を誘発した。こちらの方は3週間余り経過しても原子炉を安定状態にすることができず、悪戦苦闘している。関係者、特に現場で設備修復作業等に携わっている人達のご努力には感謝しているが、この社会全体を覆っている重苦しい雰囲気が払拭されるよう、一日も早い事故処理と安全宣言を期待している。
原発事故の影響で必要電力の確保が難しくなったとして、東京電力は計画停電(輪番停電)を始めた。現在の供給力は他電力会社からの融通分を加味しても3,800万㌔W程度のところ、電力需要がそれを上回りそうなので、電力不足による社会混乱を最小限に止めるために、特定の地域をグループ分けして必要の都度、電力需給調整を行なっている。
電力の需要には季節変動があって、夏の冷房季と冬の暖房季がらくだのふたつこぶを描く。その他は中間期と位置づけられる低需要期で4、5月は計画停電をしなくてよさそうだが、6月以降は休止中の火力発電所の稼動等供給体制強化策を講じたとしても、電力不足は避けられない見通しとの説明だ。
戦中・戦前の大停電や第一次オイルショック(1973年)後の電力使用制限令を知らない世代にとっては、初めて経験する困難な出来事だが、国民の叡智と社会全体の協力で、この難局を乗り越えなければならない。
現在の計画停電については、対象地域に偏りがあり、対象とされた地域からは公平性を欠く施策だとの不満が出ている。これから暫くの間は電力不足が続くと想定されていることや、計画的生産活動に配慮すべきこと等を考えると、電力需給調整策は「計画節電」に舵がきられていくものと見られている。
電力需要のピークを下げるには、休日を平日に振り替えて需要を均す「分散休日」「輪番操業」「時間差操業」や店舗、事務所などの「照度低下」「室温管理」等の節電施策が必要だが、比較的統制がききやすい産業界とは別に、「電力需要の4割を占める家庭用や零細事業者など小口契約者の動向が大きな課題になる」と指摘されている。
他方、供給電力増加策としては、企業等が所有する自家発電設備稼動による電力調達や(家庭用に有効な)太陽光発電の普及促進等が検討されるものと思うが、それらの施策を総動員したとしても、電力不足を解消できる保証はないので、一層の国民的努力が求められている。
このような社会状況の中で、マンション管理組合ができることは何かを考えてみた。三つのことが思い浮かんだ。一つは共用部で使用する電力を節約することだ。
マンションの共用部で一番電気を使いそうな所を考えてみよう。まず頭に浮かぶのは、廊下の照明とエレベータだが、それらに次のような具体策を施しては如何だろうか。
・ 共用廊下の照明時刻変更、数量の間引きによる照度下げ
・ エレベータ(複数設置の場合)の間引き運転
・ 大規模マンションの自家発設備の稼動
特に、マンションの共用廊下照明は、その設置台数が多いのと、遠めにも目立つところから、大型の豪華客船にも似て浪費の象徴的存在と見なされる場合がある。社会ニーズへの対応等を併せ考えると、何らかの対策が必要だ。
二つ目は組合員に対する啓発活動。組合員に対する啓発活動は、このような節減施策を円滑に実施するためにも必要があることを理解して、念を入れなければならない。屋内非常階段など日中でも暗い所ができてしまう場合もあると思うが、そのような所には「自転車用乾電池式LEDライト」や「乾電池式ランタン」あるいは要所に「懐中電灯」を置いて、危険防止と安全確保に努めるなどの配慮が必要になる。建物の構造や建築設備はマンションごとに区々なので、自らの建物等を再点検して、自分達にあった対策を行なうことが必要だ。そして、一人ひとりの組合員が、協力して節水すれば、給水・排水系統のモーター電力を節約できるのだから、そのような事も含めて啓発したらよい。
三つ目は(省エネ)LED照明器具への交換工事や太陽光発電設備導入といった少エネ策の推進と自前電力調達だ。以前このブログに「マンション屋上へ太陽光発電を設置」記事を書いたが、使っていない所を有効活用して社会に貢献できるほか、新たに「原子力から自然エネルギー」という社会的要請が加わったことを考慮すると、「計画節電」時の有力対応施策として、真剣に考えてみる必要がある。また、LED照明器具については、初期投資額が蛍光灯に比べると高いという難点があるが、ランニングコストは安いこと及び「節電」という社会ニーズに応えるために、「みんなが使っているみんなの照明」を改修して、オピニオンリーダー的役割を果たしてはどうか。
終わりに、朝日新聞天声人語を紹介したい。「途切れた日常が、遠慮がちに戻り始めた。月が替わり年度が改まるこの機に、せめて気持ちだけでも切り替えたい。」
【用語解説等】
今夏の供給能力:4,500万㌔W(午後1~3時頃のピーク需要は節電効果を織り込んで5,500万㌔W)〈昨年のピークは6千万㌔W〉
1974の電力制限令:電気事業法27条に基づく強制措置。火力発電所の使用燃料を節約する目的(総量規制)で発動した。
この夏の使用制限:需要が供給を上回った瞬間に起きる大規模停電を避けることが目的で、ピーク時の「使用最大電力」を制限する。
交代休業:工場ごとに期間を区切って操業を止める
企業節電:25%減目標