2011年10月16日

ドア・サッシをリースで交換

『マンションドア・サッシ交換「リースで一斉に」業界参入』という記事が14日、新聞に掲載された。

居室の玄関ドアや外部に面した窓やサッシ類は一部を除いて共用部なので、区分所有者が勝手に工事を行なうことはできない。築年数が高じたいわゆる経年マンションでは、断熱等に課題がある場合があって、結露やすきま風といった居住性の悪さに悩まされる。4~5年ごとに行なう長期修繕計画の見直し時にその改善策を盛り込み、大規模修繕工事に必要な資金の積立を行なっていればよいのだが、ことお金の拠出に関しては組合員の合意形成が難しいらしく、国交省が5年ごとに行なう実態調査結果を見ても充分に配慮されているとは言えないのが現状である。

手持ち資金を上回る大規模工事を行なおうとする場合にどうするか?
これまでは組合員から一時金を徴収するあるいは住宅金融支援機構等の金融機関から借入する、この両方を使って資金調達するといった方法に限定されていた。
そのような中、大規模修繕工事のある部分だけが対象とはいえ、資金調達面での不安を解消できる選択枝ができるということは、建物等の維持管理面で有効な手段の一つになるものと期待される。

問題はコストパフォーマンス面だろう。
記事によれば、52世帯規模で、玄関ドア交換、窓はペアガラスで古いサッシの内側にはめ込む「カバー工法」、全体では167セットを交換し、費用は約3,250万円だったとある。
それを月々約30万円、10年のリースにし、10年後に所有権が管理組合に移る仕組みで契約するとのことだから、単純計算では、1世帯あたり3.2セットを62.5万円で施工し、借り物の金利は約1~2%となるようだ。

これが高いか安いかは、建築士等専門家の工費判断を待たなければならないが、先に述べたとおり、大規模修繕工事では緊急性の高い工事が優先され、居住性能向上等の改良工事については組合員の合意形成が得づらい状況のなかで、一つの有力な選択枝となりうることは喜ばしいことだ。
経年マンションで結露等の悩みを抱える管理組合では、長期修繕計画を見直す際に改良工事を追加するなど、住んでいる人達がいま現在を快適に生活できるよう配慮してはどうだろう。

なお、この事業はLIXIL(旧トステム)と三菱UFJリース、YKK APと東芝ファイナンス、三協立山アルミとオリックス等が事業化しているとのことなので、興味がある方は問い合わせてみるとよい。

2011年8月 3日

塗る太陽電池

不祝儀があって、しばらくブログを書くことができなかったが、漸く落着いてきたので、先月(H23.7.19)新聞に掲載された記事のことを書くことにした。

東日本大震災後の原発事故が、その終息時期が見えない中、現実の政治課題である「再生エネルギー法」が審議されているこの時期に、新たなそして大変楽しみな技術が実用化に近づいた、との記事が載った。

それは、「塗る太陽電池」の事だ。
太陽光発電のことは、これまでもこのブログに書いてきたが、結晶シリコンをガラス板で挟んだパネルを太陽に向けて設置する機器で、屋上等に広いスペースが必要だ(逆にいうとスペースという制約がある)という程度の知識しかなかった。
今回、三菱化学が開発した技術は、炭素化合物を使ったもので、乾いて固まると「半導体」の役割を果たし、配線を施せば光に反応し電気を起こす。「塗る」ものだからマンションやビルの壁、車のボディーで使える。(その他のイラスト例示として工場の屋根、高速道路の防音壁が書かれていた)
太陽光パネルは厚さが数センチ必要だが、この方式だと1ミリ弱で済み、重さも同じ面積なら、結晶シリコン系の10分の一未満に抑えられるという。しかも量産しやすい技術とのことなので、紙面にコスト面の記述はなかったが、筆者の経験から言うと低コストの期待が大きい。
2013年ごろに出回ることになりそうとのことだから、いまから2年後が楽しみだ。

このような新技術は、新築マンションでは必須の設備になっていくと想定しているが、問題は既存のマンションだ。組合員の利便性や資産価値の向上といった観点からいうと、最新技術のプライオリティは高い。それほど高額な設備ではない反面、在るとないでは圧倒的な差が生じる設備だから、長期修繕計画を見直す際には修繕項目に追加するなど、時代を見据えた新技術導入を念頭に置いて、早めに手当てすることを推奨したい。

2011年6月10日

「電気&設備」と節電

「夜の電気代安く」という見出しの記事が6月9日朝刊に掲載された。
『NTTファシリティーズは、電力を提供している首都圏の9マンション(3千世帯)の電気料金を、昼は高く、夜は安くする。電気需要が多い昼の使用を控えてもらい、15~20%の節電を目指す。
 同社は電力小売事業者「エネット」から一括して電気を買い、マンションの各世帯に販売している。このため、東京電力とは別の料金設定ができる』という内容だ。
 
 東日本大震災と原発事故により、今後のエネルギー政策(自然エネルギーへのシフト、発送配電分離⇒完全自由化)の動向が注目を集めているが、この記事でも分かるとおり、電力の一部(業務用や産業用)については、既に規制緩和されている。記事は電気エネルギーに関する社会的関心の高まりを受けて、その一形が例示的に示されたものだ。
 この制度の特徴は、集合住宅の規模のメリットを利用したところにある。マンション全体を一つの大口契約者とみなして、電力会社から高圧の事業用電力を一括購入し、変電設備で低圧電力に変圧後マンション内(専有部分)へ配電する。電気代を割安にする目的から、新築時にこのシステムを導入するところが増えていて、変電設備は一括購入する事業者が設備するようだ。(居住者は、一括購入事業者と契約・料金支払を行い、東京電力と直接契約しない)
要約すると、割安な事業用電力と割高な民生用(家庭電源)の価格差を利用した仕組みということになるが、実はこの仕組みを使った事業を東京電力も行なっている。(「東電も家庭向け割安電力 マンションで一括契約」2004/7/28。記事には通常より5%程度安い電気代と書かれている)

以前このブログに書いたが、屋上などマンション共用部には自然エネルギーを利用するときに必要な機器設置スペースがある。敷地や建物の遊休スペースを使って、太陽光発電などでエネルギーの自給自足を図ることは、ある意味で社会貢献にもなる価値ある取り組みだと考えているが、現状具体的な取り組みは遅れている。
将来、そのような取り組みが世間一般に広く浸透する頃には、電力の完全自由化が実現しているかもしれない。その時に、記事のような価格差を逆手にとった方法の有効性は評価されるのだろうか?時代遅れになっている懸念はないか。そのように考えたとしても、現時点で出来ることとしては、電気料金節減の一つの有効な手段であることは間違いないと言えるだろう。
既存マンションは目先のコストダウンを考えるより中長期的な視点で物事を考える必要がありそうだ。


【用語解説】
 1995年 電力会社に卸電力を供給する発電事業者の参入が可能になる。
       大型ビル群など特定の地点を対象とした小売供給が特定電気
            事業者に認められる。
 2000年 2,000kw以上で受電する大需要家に対して、特定規模電気事業者
              による小売が認められる。
 2005年 特定規模電気事業者の基準を50 kw以上に改正。

2010年10月28日

太陽光発電

10月27日日刊に、「マンションでも太陽光」と題する次の記事が載った。

『JX 日鉱日石エネルギーは、マンション住民向けの太陽光発電システムを販売し始めた。屋上に太陽光パネルを設置し、1戸あたり1.26KW分の電力を送る。余った電力を電力会社に売る契約は各戸に結んでもらう。購入電力の減少や売電で、1戸あたり月4千円ほどお得だという。新築だけでなく、改修時にも設置できる。標準販売価格は新築で1戸あたり約115万円(税込み、工事費除く)』

 マンションの屋上はあまり使い勝手がよくない。古くは物干し場として活用された事例もあるが、人や物の落下事故防止策が必要なことや、足音等の階下騒音問題から、活用されていないケースが多い。その点、太陽光発電はマンションの遊休資産活用策にうってつけだ。地球環境に配慮できるうえ、電力コストが低減できるのであれば、こんないいことはない。
 ところで、この記事にはわからないこともある。マンションの屋上は法定共用部だから、個人(区分所有者)が当然に使用できるわけではない。使用可能にするためには、使用条件、有償・無償の有無等を管理規約に定めなければならない。もしかしたら、初めに総ての専有部分を有する分譲業者が、個人使用可能なように規約に規定することを想定しているのだろうか?
 記事は個人を対象にしているようであるが、むしろ管理組合こそ対象にしてはいかがか。廊下やエレベータなど共用部で発生する電気料は、管理費コスト削減対象として有効だ。
 記事の意図とは異なるかもしれないが、マンション管理組合は、遊休資産を活用する手段を積極的に検討すべきである。      

 なお、足立区には、太陽光発電システム設置に助成する制度があるので、次に記します。

※住宅用太陽光発電システム設置費補助金(22年10月現在)
住宅用太陽光発電システムを設置した区民に対し、設置経費の一部を助成しています。
補助金額
1KWあたり10万円(上限40万円)

問い合せ先
温暖化対策課 環境計画係 ℡ (3880)5935

 

H23.5.26 朝刊記事 「太陽光発電 マンションにも」  追記
朝刊社会面に「専有部での太陽光発電の利用形態」など参考になることが掲載されたので追記する。

専有部での使い方
 ①「戸別方式」
   発電パネルと各部屋を一対一で接続する方式
 ②「一括方式」
   マンションの受変電設備を通じて各居室に電気を配分する方式
   注.居室ごとに売電はできない。

設備導入にあたって検討すべきこと
 立地条件:将来も充分な日照を得られるか
 保証期間:パネル10年、それ以外の機器2年
 維持管理費等:月額2,000円程度/戸の積立が必要
筆者補足
長期修繕計画:必要額を算定すること

2010年5月30日

自転車シエア

先日、「電気自動車シェア」のことを書いてから思い出したことがある。自転車シェアについての記事がスクラップしてあったのだ。
平成22年1月6日(夕刊)に「自転車シェア都心流 (高層マンション置場なくて)」という記事が掲載された。
港区内の賃貸マンションの事例として、「駐輪場の不足分を20台のレンタル自転車で補っている。電動と一般があり、登録制で月額1,050円。1回6時間の制約はあるが基本的に使い放題。無人の宅配用ロッカーにカードキーをかざし、電動自転車のカギとバッテリーを取り出す仕組み。返却もカギとバッテリーをロッカーに戻すだけ。自動で充電される。コンピューター管理されており、住人は携帯電話のサイトで空き具合を確認できる。管理側も借りた人を把握でき、返却漏れなどを防ぎやすい。」という内容だ。

そして『宅配ロッカーで管理』との見出しで、「マンション側の悩みを耳にした宅配ロッカー大手のフルタイムシステム(千代田区)が三井不動産などと協力して自動管理システムを開発、販売した。今年度末までにマンション93棟で約700台が稼動する。1台あたりの初期費用約25万円。」という記事が続いていた。

管理組合がシェアを考えようとしたとき、一番の障害事項は『貸し出し、もどしなどの管理運営をどのようにしたらよいか』ということであろう。その点この仕組みは管理する側の負担が少ないうえ、利用者の使い勝手がよい優れものだ。
宅配ロッカー設備契約の有無との関係などわからないことがあるが、駐輪場が不足している、あるいは2段式駐輪設備では子供椅子つき自転車が入れられないなどの困りごとを抱える管理組合は、初期費用約25万円の多寡を含めて一度検討してみたらどうだろう。

また、行政主導で進められている自転車シェア関係記事「富山市・北九州市 初の事業化」が平成22年5月7日に掲載された。

※二、三日前のことだが、ラジオを聴いていたらイギリス在住の人が、ロンドンの自転車シェアのことを話していた。ロンドン(市が事業主体らしいが未確認)は登録制で、最初の30分間は無料、その後1時間あたり1ポンド(約130円)と報告していた。(22.9.3追記)(時間当たり金額については聞き間違いがあるかもしれないので、興味がある人は自ら確認してください)

2010年5月 6日

電気自動車シェア

4月27日朝刊に「入居者で電気自動車をシェア オリックス分譲マンション」という記事が掲載された。このところ環境問題関連記事が目に付くが、マンションに関係した記事が増えていることも注目に値することだと喜んでいる。
以前、今回記事と類似性がある「プラグイン・電気自動車設備」のことを書いたが、それはどちらかというと設備系のことで、今回は管理運営ソフトの色彩が強い。
記事は「2012年完成予定の川崎市の高層マンション(33F,300戸)でハイブリッド車2台、EV車2台を初めて用意。カーシェア大手のオリックス自動車が運用し、月額数千円の基本料と時間や走行距離に応じた料金を払えば、利用できる。充電のための設備が必要だが、マンションの売りの一つになると見て、EV車の導入を増やしていく」という内容だ。

駐車場はマンション敷地の内、外どちらなのか、電気自動車充電設備は業者所有なのかなど、管理組合が負担することになる業務、費用等は、この記事だけではわからない。
わからないことは多いが、このような先進的な取組みには好感が持てる。最近の大規模マンションは、便利さや健康志向関連等を売りにしたものが多いが、「あればいいね」程度の設備はいずれ『不要不急」「分不相応な施設」として、管理組合運営の問題児になることが懸念される。しかし、今回のように社会全体が求めるような設備の場合は、その心配はない。

既存マンションでも、一定規模以上のところはこのような先進的な取組みを検討してみてはどうだろう。マンションの価値が上がることは間違いなしと思えるから、設備導入が必要な場合は長期修繕項目に入れるなど、時代を見据えた早目の検討をお勧めしたい。同時に、カーシェア業界の熱意にも期待している。

〔参考〕賃貸マンションの事例(新聞記事)
「三井物産は、自動車を複数の会員で共同利用する『カーシェアリング』事業で野村不動産投信と提携し、野村の賃貸マンション(駐車場が空いている物件)に子会社のカーシェアリング・ジャパン(サービス名『カレコ』)が貸し出し拠点を設けることにした」という記事が載った。(平成21年12月4日朝日)

〔参考〕レンタカーのオリックス自動車が、平成23年4月1日から、東京都墨田、千代田、港、新宿、板橋区にある駐車場計5箇所でサービスを開始する。注目の料金だが、月会費(金額不詳)に加えて、時間と距離に応じた料金が必要で、時間料金が15分150円、距離料金は1キロ30円に設定。(平成23年3月1日朝日)

2010年3月 1日

電気自動車充電 マンションOK

新聞に掲載(H21.11.26)されてから少し時間が経ったが、環境問題意識の向上に伴って普及が進むであろうことや、戸建は対応しやすい反面マンションではどうか…?と、考えていたことの解決策になりうる技術なので、書くことにした。

それは、プラグインといわれる家庭での電気自動車充電設備のことだ。
戸建の場合、車庫の電源を使用するのに何の不自由もないが、マンションの場合は、専有部からコンセントを引くことは困難だから、共用部に何らかの設備をしない限り、プラグインは難しいと考えていた。

今回、宅配ボックス大手の日本宅配システム社が三菱自動車と共同開発したシステム(i-CHARGER)は、宅配ボックスの個人認証方式を用いて、誰がどれだけ電気を使ったかを把握するというもの。充電器に個人を識別するチップ入りの鍵をかざして充電すると、宅配ボックスのデータベースに使用者と電気使用料を記録して、後日、管理組合などが使用者に請求するという仕組みだ。問題は費用だが、配線工事費を除き親機が30万円、子機が1台9万円だというから、それほど高いものには感じない。

電気自動車のこうした設備は、新築マンションでは必須の設備になると想定しているが、問題は既存のマンションだ。組合員の利便性や資産価値の向上といった観点から言うと、最新技術のプライオリティは高い。それほど高価な設備ではないが、在ると無いでは圧倒的な差が生じるから、大規模修繕項目に入れるなど、時代を見据えた早目の手当てを推奨したい。
なお、こうした設備の場合、メンテナンス費用が発生することが多いので、それらを含めて検討する必要がある。

2008年10月20日

高置水槽方式について

10月18日の朝刊に「学校の水道に虫」というタイトルで、次のような内容の記事が掲載された。「神奈川県下の小学校の水道水から数ミリの羽アリのような虫が約30匹見つかった。このため学校では水道水の使用を中止し、給食についても水を使わない献立に変更した。この学校では、水道水を校舎屋上の水槽に貯めて使っている。水槽は強化プラスチック製で、側面上部に排水用の小さな穴はあるが、網を張り異物が入らないようにしていた。毎年1回定期清掃しており、7月の点検でも異常はなかった。(緊急点検の結果他の学校でも約40匹の別の虫が発見された)」

水道事業者から供給を受けた水は、一旦地下室等に設置された受水槽に入り、そこから屋上の高置水槽にポンプアップされ、水圧を使って必要か所に供給される。この構造は、以前は一般的に用いられた給水方式で、学校、マンション等多くの建物に採用され、現在も経年マンションのほとんどはこの「高置水槽設備方式」による給水を利用している。

この設備の欠点は、屋上に近い階の水圧が弱い、水道水の供給に水槽を二つ使用すること等が考えられるが、最大の欠点は、記事のように毎年定期清掃を実施しても異物混入しやすいことと地震に弱いことだ。今回の出来事は自然界の現象が一因といえそうだが、一般に給水設備設置環境は、誰でも近寄れる場合が多いところから、第三者による薬品投入犯罪に対する備えも忘れてはならない。

給水方式には下段参考2に記したように何種類かある。高置水槽方式を使用中のマンションは、コスト検討のほか、不測の事態に遭遇することを避ける手段を優先的に考えて、長期修繕計画に改修計画を織り込むことを推奨したい。


参考1:高置水槽の地震対策

  高置水槽本体並びに揚水管等に、揺れ・振動補強を行う。
  ①水槽…アンカーで固定する
  ②揚水管等…1m以上のフレキシブルジョイントを使用する

参考2:給水方式

 (1)直結式給水
   ①水道直結方式…水道本管から分岐し、直接給水する
   ②増圧直結給水方式…増圧ポンプを介して直接給水する
 (2)受水槽式給水
   ①高置水槽方式…記事該当
   ②圧力タンク方式…圧力タンクを使い圧縮空気の力で給水する
   ③ポンプ直送方式…加圧ポンプを使って給水する
                                            以上


【20.12.4追記】 20.12.4朝刊記事「水道タンク(受水槽)に遺体1ヶ月」三重県松阪市のショッピングセンター