2011年4月23日

長周期地震動の揺れ

「新宿高層ビル揺れ13分」という見出しの記事が4月19日朝刊に掲載された。
1月のこのページに『ゆっくり揺れ対策 超高層に義務付け』記事のことを書いたが、震度5強が襲った東京・新宿超高層ビルで、横揺れを計測した結果とそれを受けての国の対応が報道されている。
調査は新宿の超高層ビルに本社を置くあるゼネコン大手が行なったもので、関東平野で6分以上の揺れだったときに、超高層では、制震装置が設置されていたにもかかわらず、13分間にわたって揺らされ続けたとの内容だ。
記事では、観測による揺れを次のように紹介している。
地震発生から揺れ始め、約2分後には長周期地震動が到達し、建物が横に大きくしなり始めた。約6分後にピークとなり、最上階(54階・223㍍)は3秒間に108㌢、高さ約100㍍の28階は3秒間に52㌢動く横揺れがしばらく続いた。その後少しずつ収まった。制震装置(揺れを2割程度吸収したとみている)がなければ、最上階はピークには3秒間で140㌢の横揺れになり、それだけ揺れると立っていることが難しいようだ。

これを受けて国交省は、1月に決めた「新たに建てる超高層マンションに、長周期の揺れも考慮した耐震強度を義務付ける方針」に基づき約8分間の揺れを想定するよう基準を強める予定だったが、想定を大きく超えたことを重く見て、再検討する模様だ。制震装置などを入れ、より揺れにくくするような設計を求めるとみられている。

長周期地震動による被害を防止する観点から考えて、横揺れ対策基準を強化することは必要なことだと思うのだが、他方、超高層マンションの管理費は一般のマンションに比べて十分割高なことを考えると、管理費等の更なるアップにつながるのでは、と気になる。建築設計業界には、できるだけ低コストで「安全・安心」希望が実現する新技術開発を期待したい。

【用語解説】
長周期地震動   地震の揺れの一つ。数秒の周期でゆっくり揺れ、人は感じにくい。大きな地震ほど起きやすく、遠くまで伝わる。関東や大阪、名古屋などの厚い堆積層がある平野部で揺れが大きくなる。
建物には「固有周期」という揺れやすい周期があり、地面の揺れの周期と重なると揺れが増幅される。長周期の揺れは高い建物の周期と重なりやすい。2003年の十勝沖地震では震源から250㌔の石油タンクが揺れ、火災が起きた。

 

2011年1月14日

「ゆっくり揺れ」対策 超高層に義務付け

『「ゆっくり揺れ」対策 超高層に義務付けへ』という見出しの記事が1月11日、朝日一面トップに掲載された。
 「震源から遠く離れた高い建物を、大きく揺らす危険がある長周期地震に対応するため、国土交通省は新たに建てる高さ60m以上の超高層ビルやマンションに、長周期の揺れも考慮した耐震強度を義務付ける方針を固めた」という内容だ。
 これまでの(耐震強度の)構造計算は主に、阪神大震災のような短い周期の地震を想定していたが、超高層建物が急速に増加したこと、長周期地震では超高層建物の高い階ほど揺れが大きくなること、上層階では家具が数メートル動き、転倒する家具が凶器に変わる危険性があること等の指摘を受けて、長周期地震でどれだけ揺れるかを構造計算でシュミレーションすることを義務化することにした模様だ。新築の超高層マンションでは、家具が固定しやすくなるよう、壁や天井を裏から補強する下地材を設けるなど、転倒防止策を講じることも義務付けるらしい。
 すでに完成した超高層ビルやマンションでも、長周期地震に耐えられるかどうかの点検を任意で求める方針とのことで、その結果大きな揺れが予想される建物は、はりや柱に揺れを吸収する制震装置を設けて補強するなど、追加の対策工事を促すとのこと。

 以前管理に携わった30階建てマンションには、揺れを吸収する制震装置の設置はなかった。素人考えだが「高層建物は、竹のようなしなやかさによって地震エネルギー等を分散・受け止めているのだから、揺れることは当たり前」くらいに思っていたので、「免震構造」や「制震構造」といっても、そのメンテナンス費用の多寡のほうに興味があるのみで、構造上の不自然さは感じなかった。幸い大きな長周期地震の発生はなかったので、被害に遭うこともなかったのだが、ちょっとした地震でも、屋上に設置された受水槽等から水がすぐに溢れる、ELV機械室に設置された地震計の振れが大きいなどから、「地面と上では揺れ具合が違う」という実感はもっていた。
 長周期地震による被害を防止する観点から考えて、この改正は必要なことだと思うのだが、他方、超高層マンションの管理費は一般のマンションに比べて十分割高なことを想起すると、管理費等の更なるコストアップにつながるのでは、と気になる。景気が悪い中、「安全・安心」にかける費用負担は、どの程度が妥当なのか考えてみる必要がある。

【用語解説】
長周期地震   1回に揺れる周期が長いほど震源から遠くまで揺れが伝わる。周期が1秒以下の短い揺れでは木造住宅が被害を受けやすいが、周期が長くなると超高層マンションが揺れやすくなる。1985年のメキシコ地震では震源から400キロ離れたメキシコ市でも高層ビルが倒壊した。

2010年11月21日

超高層マンション火災

「高層住宅全焼42人死亡 上海」という見出しの記事が11月16日、掲載された。同日のテレビでも放映されたので、見た人は多いと思う。建物全体が炎に包まれている様子は恐ろしく、同時爆破テロで焼け落ちた世界貿易センタービルを思い出した。超高層マンションに住んでいる人は、他人事とは思えない緊張感を覚えたのではないだろうか。
 外壁工事中だった中国上海市の28階建(約160戸)マンションは、10階付近で溶接工が違法な工事を行ない、火花が竹製の足組やナイロン製の部品に飛び散り、壁の保湿剤に燃え広がって、建物全体に火が広がったのだという。
 新聞の現場写真やテレビのニュースを見た時、日本でも起こる可能性はあるのだろうか?と考えてみた。
  以前、30階建てマンションの管理に携わった経験と、消防設備士の有資格者という立場でいうと、消防設備点検等を適切に行なっていれば、このようなことは起こらない、というのが私の結論だ。(無論、100%ないとは言い切れないが) 日本の超高層マンションの場合、消防法の厳格適用等の効果もあって、警報、消火等の消防設備はかなり念入りに設備されている。建物内で火災が発生した場合は、最初に火災報知器が作動して警報音(又は音声)が発報し、ほとんど同時にスプリンクラーが作動する。上部階への延焼要因は、階段等の開口部が煙突の役割をして燃え広がるのだが、そこには防火扉が設置されている。だから、通常の火災の場合、該当居室だけで終わることが多いのだ。
 超高層マンション住民が知っておいた方がよいことは、①消防設備の配備 ②設備の維持管理状況 ③自衛消防隊 ④消防設備の維持管理コスト の四つだ。これらのことは、理事会に問い合わせても分かることだが、定期総会に出席して、みんなで議論するほうが防災上効果的だ。年二回行なわれる防火訓練に参加して、自分達の棲家の消防設備や態勢がどのようになっているか、実際に知る必要がある。これまで訓練に参加したことがない、と言う人は是非参加して、自分達の「安全・安心」について考えるべきだ。大切な命と財産を他人任せにしてはいけない。
 ちなみに、消防自動車(はしご車)の能力は、市町村レベルで保有している車は高さ30mくらいまでしか伸びないことを知っておこう。大体10階ぐらいまでだ。最大級のはしご車でも50mだから、大体15階くらいの高さしか届かない。それより上は初期消火用の消火器とスプリンクラー、屋内消火栓設備が頼り、ということになる。
 なお、問題は、消防設備の維持管理コストがばかにならないことなのだが、こちらの方は専門家しか評価できない面があり、妥当性の判断は難しい。「安全・安心」と同時に、設備維持管理コストについても、考えてみる必要がある。

【用語解説】
 超高層   高さ60m超えの建物。(当委員会は)20階建て以上のマンション
 消防設備  1類から7類までの7類に区分けされている

2009年6月13日

超高層マンションの管理費

最近、当委員会HPへ「超高層マンションの管理費」についての照会が増加しているので、それらの人たちの期待に応えるため、手元にあるデータを公開する事にした。(データ件数が100件ほどしかない事、足立区内には超高層マンションが少ないことから活用してこなかった)
超高層マンションというのは、建築基準法上の高さ60m超えの区分所有建物で、凡そ20階建て以上の建物をいう。(厳密には建築確認申請等を見ないとわからない場合がある)
超高層建物を建築する場合には、航空識別灯の設置やELV設備数等に伴うコスト増課題と開発行為時の煩多な諸手続きが敬遠され、その高さを超えないところで押さえ込む場合が多い。だから、60mを超える場合には、それを売りにするため”タワーマンション”などと訳のわからない表現を用いて、購買意欲をそそる努力をしている。

超高層マンションの売りはなんと言ってもその眺望にあるのだろう。最上階から見る景色は素晴らしいに違いない。しかし注意しなければいけないことは、20階から下に住む人は、そのような特別な景色を楽しめるわけではないということだ。そのほかにも留意すべき点があるので、新規購入を考えている人に向けて何点か指摘しておきたい。
【超高層マンションの特徴】
・管理費が高い→多様な設備、管理形態(常勤)、過剰サービスが原因
・地震(震度4クラス)の影響→(耐震建物の場合)ELV停止・復旧に数時間必要
・        →(免震建物の場合)ELV停止はないが、設備メンテ費用が割高
・災害時の対応→30階から避難するのに健常者でも10分以上かかる
・  〃      →30階まで階段で上ると健常者で約25分かかる
 非常階段が混雑する事や、水を運ぶ事を想定した場合、二次災害の危険を感じる
・首都圏での大規模地震が心配されている今日、高齢者や乳幼児、身体に不都合を抱える人等が棲家とすべきものとは言い難い建物の一つと言える。

超高層マンションの管理費は、管理形態の別:①管理員日勤②常駐(昼間:管理員、夜間:警備員)、共用部分の娯楽施設維持費の多寡、取次ぎサービス要員配置などにより、管理委託契約費用が増加する事に比例して、高額になる。
始末が悪いのは、初期設定された内容を変更しようとする場合には、それが良くて購入した人たちの説得に、大きな労力が必要になると言う事だ。
ホテル並み設備やサービスが本当に必要なのか、(あったら便利程度の事か)十分考える必要がある。

※超高層マンションの㎡当り管理費については上部グローバルナビゲーション『管理費の研究』をご覧ください